「事業用自動車を運転する場合の心構え」は、トラックドライバーに対する法定12項目の指導・監督における最初の項目です。このページでは、事業用自動車の運転者が担う社会的使命や、トラック事故が社会へ及ぼす影響、日々の運転で意識すべき行動について解説します。
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運転者に対し、国土交通省が定める指針に基づいた指導・監督を毎年行う必要があります。「事業用自動車を運転する場合の心構え」は、その法定12項目の第1項目に位置付けられています。
指導では、貨物自動車運送事業が公共的な輸送事業であり、貨物を安全かつ確実に輸送することが社会的使命であると認識させることが求められます。また、トラック事故が社会に与える影響や、事業用自動車の運転が周囲の運転者に与える影響を理解し、他の運転者の模範となる意識を持たせることも重要です。
※参照元:国土交通省「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/kamotsu_sidou.pdf)
トラック輸送は、食品や日用品、工業製品、建築資材など、社会生活や産業活動に必要な貨物を各地へ届けています。国土交通省の指導監督マニュアルでは、国内の貨物輸送量をトン数ベースで見た場合、約9割をトラック輸送が担っていると説明されています。
荷物が必要な場所へ予定どおりに届かなければ、店舗への商品供給や工場での生産、医療・福祉サービスなどにも影響する可能性があります。そのため、トラックドライバーは単に車両を運転するだけでなく、物流を通じて暮らしや経済活動を支える役割を担っていると理解することが大切です。
※参照元:国土交通省「自動車運送事業者が運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル【トラック事業者編】」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/truck_honpen.pdf)
トラックは車体が大きく、乗用車と比べて重量もあるため、事故が発生した場合には被害が大きくなる可能性があります。運転者や事故の相手だけでなく、周囲の道路利用者、荷主、勤務先、運送業界全体など、幅広い範囲へ影響が及ぶことを理解しなければなりません。
大型の車体を持つトラックが歩行者、自転車、二輪車、乗用車などと衝突した場合、重大な人身事故につながる恐れがあります。トラックは走行距離当たりの事故件数が乗用車より少ない場合でも、事故が死亡事故につながる可能性について十分に認識する必要があります。
運転者には、事故を起こしてから反省するのではなく、「事故を起こしてはならない」という強い意識を持って運転する姿勢が求められます。
トラック事故によって車両や積荷が道路をふさぐと、通行止めや交通渋滞が発生する可能性があります。危険物や大量の貨物を積載している場合には、積荷の飛散や漏えいなどによって、周辺住民や環境へ影響を及ぼすことも考えられます。
事故の影響は事故現場だけに留まらないため、社会全体への影響を想定して安全運転を徹底することが重要です。
交通事故を起こすと、貨物の破損や配送の遅延が生じるだけでなく、荷主や取引先からの信用を失う可能性があります。事故の内容によっては、事業者や運転者への行政処分、損害賠償、企業イメージの低下などにつながる場合もあります。
一人の運転者による行動が、所属する会社だけでなく、トラック運送業界全体への社会的な評価に影響することを意識しなければなりません。
事業用自動車の運転者は、運転を職業とする立場として、一般の道路利用者の模範となる運転が求められます。単に交通違反をしないだけでなく、周囲に不安や危険を与えない安全で冷静な運転行動を継続することが大切です。
安全運転の重要性を理解していても、日々の業務に慣れるにつれて緊張感が薄れたり、運行上の焦りから判断を誤ったりすることがあります。とくに以下のような場面では、職業運転者としての心構えを改めて意識する必要があります。
渋滞や荷待ちによって予定より運行が遅れると、速度を上げたり、休憩を省いたりしたくなる場合があります。しかし、納期を守るために危険な運転を行えば、事故によってさらに大きな遅延や損害を招きかねません。
遅れが生じた際は無理に取り戻そうとせず、安全を優先して運行管理者へ状況を報告することが基本です。
同じ経路を繰り返し運転していると、「いつも問題なく通行できている」という慣れが生じ、確認がおろそかになる可能性があります。しかし、道路工事や天候、交通量、歩行者の動きなど、道路状況は日々変化します。
走り慣れた経路であっても思い込みで判断せず、交差点や横断歩道では毎回確実に安全確認を行うことが必要です。
割り込みや急な進路変更を受けると、感情的になって車間距離を詰めたり、相手の車両を追いかけたりする危険があります。こうした行動は新たな事故を招く恐れがあるため、相手の運転に対抗してはいけません。
職業運転者として冷静さを保ち、速度を落として安全な車間距離を確保するなど、危険を遠ざける行動を取ることが大切です。
長時間の運転によって疲労や眠気が生じると、安全確認の不足や判断の遅れにつながります。使命感や責任感だけで無理に運転を続けることは、安全な行動とはいえません。
安全に運行できない恐れがある場合は、無理をせず運転を中止し、休憩や睡眠を取る必要があります。自身の状態を正確に申告することも、プロドライバーに求められる責任です。
事業用自動車を運転する心構えは、標語として覚えるだけでは十分ではありません。毎日の点呼や運転、荷役、休憩、運行終了後の報告など、具体的な行動として実践することが重要です。
「安全運転を心がける」「事故を起こさない」と伝えるだけでは、教育が抽象的になり、実際の運転行動へ結び付きにくいことがあります。心構えを定着させるには、事故統計や実際の事故事例、自社のヒヤリハットなどを用いて、運転者自身に事故の影響と取るべき行動を考えさせることが有効です。
国土交通省の指針では、一方的な講義だけでなく、少人数での話し合い、映像やイラストを使った学習、実車を用いた確認など、参加・体験・実践型の指導を活用する必要性が示されています。
事業用自動車を運転する心構えは、法定教育を受講しただけで身に付くものではありません。事故を起こさないという意識を、点呼、健康管理、車両点検、危険予測、運行後の振り返りなどと結び付け、日常的な安全行動として定着させることが重要です。
教育内容や指導方法が管理者ごとに異なる場合は、運転者へ伝わる基準にもばらつきが生じます。外部サービスの活用も検討しながら、事故事例や運転データを基に継続的な指導を行える体制を整え、職業運転者としての意識と行動を組織全体で育てていく必要があります。
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