このページでは、トラック運送会社の運行管理者向けに、適正化事業実施機関(トラック協会)による「巡回指導」の対策について解説します。とくに指摘を受けやすい「安全教育の実施状況」に焦点を当て、低評価(D・E評価)を回避するための指導教育記録簿の正しい残し方や、実務上の注意点をまとめています。
トラック協会の巡回指導は、運送事業者の法令遵守状況を確認し、A〜Eの5段階で評価を行うものです。総合評価が「E(適正割合60%未満)」の場合や、「D(適正割合60%以上70%未満)」で3ヶ月以内に改善報告書を提出しない場合、国土交通省(運輸支局)へ通報され、行政監査の対象となるリスクが高まります。
さらに令和5年(2023年)4月の監査方針改正により、総合評価が「3回連続でDまたはE」となった事業者は、改善報告書の有無に関わらず自動的に行政監査の対象となる厳しい運用が始まっています。行政監査で法令違反が認められれば、車両の使用停止などの重い行政処分が下される可能性があります。
巡回指導の帳票チェックにおいて、運行管理や労務管理と並んで厳しく確認されるのが「従業員に対する指導監督(安全教育)」の項目です。法定12項目が計画通りに実施されているかをはじめ、初任運転者(座学15時間・実技20時間以上)や事故惹起運転者(座学6時間以上)への厳格な時間要件が守られているかが細かく見られます。また、高齢運転者に対しては特定の時間規定はないものの、適齢診断の結果に基づいた個別指導の記録が求められます。
ただ「教育を実施している」と口頭で説明するだけでは不十分であり、客観的な証拠(エビデンス)の提示が不可欠です。
安全教育に関して、巡回指導でとくに「否」の判定を受けやすいポイントは以下の通りです。
指導記録簿に「13:00〜14:00に座学を実施」と記載されているのに、同じ時間帯のデジタルタコグラフ(デジタコ)が実稼働(走行中)になっていたり、点呼記録で「乗務中」となっていたりするケースです。明らかな矛盾は「虚偽の記録(改ざん)」を疑われる原因となり、重い処分に直結します。
年間計画が立てられていても、シフトや夜勤の都合で一部のドライバーが教育を受けていない(記録簿に名前がない)状態が放置されていると、法令義務の未達成として指摘の対象になります。
平成21年の規則改正により、安全教育の記録には「指導で用いた資料等の写し(コピー)」を添付することが明示されています。記録簿に実施内容の文字だけが書かれており、使用したテキストの提示ができないと、保存義務違反とみなされる場合があります。
巡回指導員に指摘の隙を与えないためには、日頃から以下の手順で記録を整備・保管しておくことが重要です。
指導教育記録簿には、「実施日時」「場所」「指導を行った者の氏名」「受講した運転者の氏名」「具体的な指導内容」を正確に記載します。これらの項目がひとつでも欠けていると、正式な記録として認められないことがあります。
記録簿に印鑑を押す前に、対象ドライバーの運転日報、デジタコデータ、点呼記録簿と時間を照らし合わせ、物理的な時間重複(ダブルブッキング)が起きていないかを必ず運行管理者が確認します。
指導教育記録簿は、営業所において3年間保存する義務があります。また、対象者が退職した場合でも「運転者台帳」は退職後3年間の保存が必要なため、教育記録と台帳を連動させ、年度ごとに整理してファイリングしておくことで、指導員が来た際に速やかに提示できるようになります。
巡回指導の通知ハガキは、通常、実施日の約1ヶ月〜数週間前に届きます。しかし、過去の教育記録を通知が来てから遡って作成することは、デジタコとの矛盾を生むリスクが極めて高く、推奨されません。日々の業務の中で、教育の実施と記録をセットで行う体制を習慣化しておくことが唯一の対策となります。
とはいえ、多忙な運行管理者が全員のスケジュールを調整し、矛盾のない記録を手作業で管理し続けるのは大きな負担です。学習履歴が自動で正確に記録され、監査対応の帳票として出力できるeラーニングシステムなどの活用は、こうした実務課題を解決する有効な手段と言えるでしょう。
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