このページでは、運送会社の安全教育担当者向けに、運転適性診断の結果を日常の安全管理や個別指導に活かす具体的な手法について解説します。診断シートの読み解き方や、ドライバーの反発を招かない面談の進め方をまとめています。
新たに採用された運転者や一定の年齢に達した高齢運転者、さらに事故を引き起こした運転者に対して受診が義務付けられている運転適性診断ですが、多くの運送会社で「結果の用紙をドライバー台帳に綴じて終わり」という形骸化が見られます。しかし、診断結果にはドライバー自身も無自覚な「判断の偏り」や「動作のくせ」が可視化されています。事故の潜在的リスクを事前に把握し、日常の運転行動を是正するための貴重なヒントとして活用することが重要です。
事業者は適性診断の結果を踏まえ、個々の運転者の特性に応じた適切な指導を行うことが義務付けられています※。さらに、実施した指導内容は法律で定められた期間、確実に記録・保存しておかなければなりません。この際、単に記録簿に文字を残すだけでなく、指導に使用した座学テキストなどの「マニュアルのコピー(写し)」をセットで添付・保存していなければ、国の監査において指導実態が認められないリスクがあるため、実務上、より厳格な管理が求められます。
※参照元:国土交通省「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」pdf
https://www.mlit.go.jp/common/001142994.pdf
万が一、義務付けられた安全指導や適性診断の受診を怠っていた場合、あるいは監査対策のために指導記録の虚偽記載(改ざん)などを行った場合は、行政から「車両の使用停止」などの重い処分が下される対象となります。稼働できるトラックが一定期間制限されることで、運送会社にとっては多大な営業損失へと直結し、経営基盤を揺るがす深刻な危機を招きかねません。「受診させただけ」「書類を揃えただけ」と判断されない実効性のある体制づくりが必要です。
複雑なグラフや評価が並ぶ診断結果シートですが、運行管理者がとくに注目すべき項目は以下の通りです。
「気持ちの焦りやすさ」や「自己中心性」といった精神面での傾向と、視覚的な情報を正確に処理できるかどうかの能力面のバランスを確認します。たとえば、判断力が優れていても態度が攻撃的であれば、過信による強引な割り込みや速度超過を起こす懸念があると予測できます。
複雑な状況下での反応の速さや、正確性に着目します。とくにとっさの場面での「ブレーキ操作の遅れ」や「操作のムラ」が見られる場合は、疲労が溜まった際の見落としや、追突事故を起こしやすい傾向があるため、事前の注意喚起が必要なサインとなります。
診断結果をもとに指導を行う際、アプローチの方法を誤るとドライバーの強い反発を招くことがあります。
プロとしてのプライドがあるドライバーに対し、「あなたは判断が遅いという結果が出ているから気をつけて」と一方的に決めつけるような指導は避けるべきです。まずは本人の日頃の運転における実感を聞き出し、「この結果についてどう思う?」と問いかける対話(傾聴・受容)から始めることで、本人の納得感を得やすくなります。
ペーパー上の診断結果だけで説得するのが難しい場合は、日常のデジタコデータや燃費の推移など、実際の走行記録と結びつけて解説します。「診断書にあった『急ぎの心理』が、実際の急加減速データや燃費の変化として現れているかもしれないね」と伝えることで、ドライバー自らが自身の運転特性を客観的に見つめ直すきっかけが生まれます。
適性診断の結果を一人ひとりの日常管理に落とし込み、教材の写しを含めた指導記録を漏れなく作成していく作業は、多忙な運行管理者にとって大きな負担となります。また近年では、法改正によって軽貨物運送事業者(黒ナンバー)に対しても同様の法定指導や適性診断の記録管理が義務付けられるなど、運送業界全体で安全管理のDX(デジタル化)が急務となっています。
こうした課題を解消し、直行直帰が多く集合研修が難しい現場であっても、営業所の手間を最小限に抑えながら確実な法令適合と事故防止を進めるには、受講履歴や理解度確認テストをオンラインで一元管理し、指導教育記録簿を自動生成できるeラーニングシステムを活用することが有効な選択肢となります。また、ドライバー自らが日々のデータを手書きで記録し、診断結果で指摘された自分の弱点を自発的に振り返るような仕組みを取り入れることも、無理なく安全意識を定着させるための効果的なアプローチとなります。
当メディアでは、ベテランが多い、あるいは時間が不規則といった「現場の状況」に合わせた比較軸で各サービスを解説しています。 自社が抱える事故リスクの低減・防止に向けて、自社の課題や運行実態に合わせてどの観点で比較すべきか。
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