このページでは、トラックドライバーの法定12項目のひとつである「安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」について詳しく解説しています。
衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)をはじめとする「先進安全自動車(ASV)」の普及が進んでいますが、これらの装置は決して万能ではありません。装置の機能と「限界」を正しく理解し、過信による事故を防ぐための適切な運転方法と指導ポイントをまとめています。
「安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」は、国土交通省が定めるドライバー教育の法定12項目のひとつです。
近年、トラックにはさまざまな運転支援装置が搭載されていますが、指導監督指針では、当該装置の機能への「過信」および「誤った使用方法」が交通事故の要因となるおそれがあることをドライバーに説明し、適切な運転方法を理解させることが義務付けられています。
国土交通省の指導監督マニュアルでも、「運転支援装置に関する性能の理解不足や過大評価により事故が発生する場合がある」と指摘されており、各装置が「作動しない条件」を正確に把握させることが不可欠です。
※参照元:国土交通省pdf(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/truck_honpen.pdf)
現在普及している先進安全自動車(ASV)の代表的な装置について、その性能と、ドライバーが必ず知っておくべき「限界」を解説します。
前方の車両や障害物との衝突の危険性が高まった際、まず警報でドライバーに回避操作を促します。それでも追突の危険が避けられないとシステムが判断した場合、自動的に強力なブレーキを作動させ、衝突速度を下げて被害を軽減する装置です。
国土交通省やNASVA(自動車事故対策機構)は、「いかなる場合でも衝突を回避できる万能な装置ではない」と強く警告しています。以下のような条件下では、センサーが対象物を認識できず、ブレーキが作動しない、あるいは十分な効果を発揮しない場合があります。
急なハンドル操作や、雨・雪などの滑りやすい路面での走行時に、センサーが車両の不安定な挙動(横滑りや横転の危険)を検知します。危険を察知すると警報音でドライバーに知らせるとともに、自動的にエンジン出力を絞り、各車輪のブレーキ力を個別に制御して、車両の姿勢を安定させる装置です。
「この装置がついているから、雨の日でもカーブを強引に曲がれる」と考えるのは非常に危険な過信です。この装置は、物理的な限界を超えた急ハンドルやオーバースピードでの走行を可能にするものではありません。スタビリティ・コントロール・システムの能力には限界があり、無理な運転をすれば容易に横転事故などにつながります。
カメラで走行車線の白線(黄線)を認識し、方向指示器(ウィンカー)の操作なしに車両が車線をはみ出した場合、あるいははみ出しそうになった場合に、警報音やディスプレイ表示でドライバーに注意を促し、車線中央に戻す操作を促す装置です。
白線がかすれて消えかかっている道路や、雪や泥で覆われている路面、工事の仮設ラインが引かれている場所では、カメラが正しく車線を認識できず、誤作動を起こしたり警報が鳴らなかったりします。また、後付けの装置の中にはウィンカーと連動していないものもあり、通常の車線変更や交差点での右左折時にも警報が鳴ってしまう場合があるため、ドライバーは自車の装置の特性を正しく把握しておく必要があります。
ドライバーのハンドル操作のパターン(固有の運転状況)をシステムが学習し、居眠り、疲労、注意散漫といった「低覚醒状態」特有のハンドルのふらつきや急な修正舵などを検知した際に、警報音やモニター表示で休憩を促すなどの注意喚起を行う装置です。
この装置は「居眠り運転や脇見運転をしても大丈夫」という免罪符には絶対になりません。また、走行中のすべての状況を網羅して検知できるモニター装置でもありません。強い横風を受けている時や、轍(わだち)の深い道路、カーブが連続する山道などでは、システムが「異常なふらつき」と正しく判定できず機能しないことがあります。
運行管理者は、最新のトラックを導入した際、ドライバーに対して「この車は安全装置がついているから安心だ」とだけ伝えてはいけません。以下の指導ポイントを徹底する必要があります。
すべての安全装置は、ドライバーの主体的な安全確認と運転操作を「支援」するためのものです。事故を完全に回避する自動運転装置ではありません。国土交通省のプレスリリースでも「運転支援システムには機能の限界があり、故障していなくても環境や条件によっては作動しない」と強く注意喚起されています。
「警報音がうるさい」「誤作動がうっとうしい」といった身勝手な理由で、ドライバー自身の判断で安全装置のスイッチを切ったり、警報音の配線を抜ったりする行為は絶対に禁止しなければなりません。日頃の点呼や定期的な同乗指導において、装置が正しくONになっているかを確認する体制が必要です。
衝突被害軽減ブレーキのカメラやミリ波レーダーは、フロントガラスの上部やフロントバンパー付近に設置されています。これらのセンサー周辺が雪、泥、虫の汚れなどで覆われていると、システムは全く機能しなくなります。日常点検において、センサー部分の清掃を確実に行うよう指導することが重要です。
※参照元:国土交通省pdf(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/truck_honpen.pdf)
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