このページでは、トラックドライバーの法定12項目のひとつである「運転者の運転適性に応じた安全運転」について詳しく解説しています。NASVA(自動車事故対策機構)などが実施する適性診断の仕組みや、ドライバーの性格・ストレスが運転行動に与える影響、そして結果に基づく適切な指導方法についてまとめています。
「運転者の運転適性に応じた安全運転」は、国土交通省が定めるドライバー教育の法定12項目のひとつです。指導監督指針では、適性診断などの結果を活用して、個々のドライバーに「自分自身の運転行動のクセや特性」を自覚させることが求められています。
また、ドライバーが抱えるストレスや疲労といった心身の状態に配慮し、それぞれに合った指導を行うことも義務付けられています。単にルールを押し付けるのではなく、ドライバー自身が自らの短所や弱点を理解し、自発的に安全運転に取り組めるよう援助することがこの項目の目的です。管理者はドライバーを頭ごなしに否定するのではなく、現在の状態を受容し、対話を通して指導していく姿勢が不可欠です。
※参照元:国土交通省pdf(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/kamotsu_sidou.pdf)
適性診断とは、自動車運送事業者のドライバーを対象に、長所や短所といった「運転のクセ」を客観的な測定によって見つけ出し、安全運転のためのアドバイスを提供する仕組みです。独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)をはじめとする、国土交通大臣の認定を受けた機関で受診することができます。
貨物自動車運送事業輸送安全規則により、運送事業者は特定の要件に該当するドライバーに対して、必ず適性診断を受診させる義務があります。
新たにトラックドライバーとして採用される方が対象です。初めてトラックに乗務する前(貨物軽自動車運送事業の場合は初めて事業用自動車に乗務する前)に受診する必要があります。診断結果をもとに、NASVAのカウンセラーからプロドライバーとしての自覚や事故の未然防止に関する指導・助言を受けます。
65歳以上の高齢ドライバーが対象です。65歳に達した日以後1年以内に1回、その後は3年以内ごとに1回受診する必要があります。加齢に伴う身体機能や認知機能の変化が運転行動に与える影響を認識させ、それに合わせた安全運転のためのカウンセリングが行われます。
「死亡または重傷事故を起こし、かつ過去1年間に事故歴がない者」、あるいは「軽傷事故を起こし、かつ過去3年間に事故歴がある者」が対象です。事故後、再び事業用自動車に乗務する前に受診します。事故を引き起こした状況の聞き取りや運転経歴を参考に、再発防止に必要な運転行動について指導・助言が行われます。
「死亡または重傷事故を起こし、かつ過去1年間に事故歴がある者(重大事故の反復者)」が対象です。こちらも事故後、再び乗務する前に受診します。運転性向の基本要因を明らかにし、事故を引き起こした特性や背景要因を深掘りして、再発防止のためのより詳細な指導が行われます。
普通免許以上を持っていれば誰でも受診できる診断です。運転態度、認知・処理機能、視覚機能など、心理・生理の両面から個人の特性を把握し、安全運転に役立つアドバイスが記載された適性診断票が発行されます。加齢や生活環境の変化に合わせて自身の状態を把握するため、少なくとも2年以内に1度の周期での定期的な受診が推奨されています。
一般診断に加えて、カウンセリング手法を取り入れた診断です。客観的な測定結果を踏まえ、NASVAのカウンセラーのサポートを受けながらドライバー自身が日頃の運転を振り返り、今後の安全運転について具体的に考えるきっかけとして多くのドライバーに役立てられています。
※参照元:NASVA(https://www.nasva.go.jp/fusegu/tekiseisyurui.html)
国土交通省の指導監督マニュアルでは、ドライバーの「性格特性」が運転にどのような悪影響を及ぼすかが具体的に示されています。自分の性格がどのような危険な運転につながりやすいかを自覚させることが重要です。
イライラしやすく、急発進・急ブレーキといった「急」のつく粗暴な運転や、スピード過多になりやすい傾向があります。些細なことで平常心を失い、無理な追い越しなどを引き起こす要因となります。
他車への譲り合いができず、自己中心的な運転になりがちです。ひどい場合には、意地悪な運転や、ルール違反を平然と行う、強がりや荒っぽい運転といった煽り行為につながるおそれもあります。
常にせかせかとした運転になり、他人のわずかなミスに対しても短気になってすぐにつっかかる傾向がみられます。車間距離を詰めるなどの危険行為を引き起こしやすくなります。
性格だけでなく「運転に対する態度」も重要です。ベテランドライバーに多い「自分は運転が上手いから大丈夫」「運転を甘く見ている」という過信は、安全確認の怠りや重大事故の引き金となります。適性診断などを通じて、こうした態度の緩みを客観的に指摘することが事故防止につながります。
過密なスケジュールや人間関係によるストレス、睡眠不足などの生理的要因は、注意力や判断力を著しく低下させます。指導監督指針では、こうした心身の負担を把握し、健康管理の重要性を理解させることも求められています。全日本トラック協会(JTA)でも、ドライバー向けに「こころの健康アドバイス動画」などの啓発を行っており、ストレスの原因や影響について周知を図っています。
※参照元:全日本トラック協会(https://jta.or.jp/member/rodo/kenko_top/movie2026.html)
適性診断の結果をドライバーに返却して終わるのではなく、運行管理者が結果を読み解き、適切なフィードバック(カウンセリング)を行うことが不可欠です。指導にあたっては以下のポイントを意識します。
頭ごなしに悪い結果を指摘するのではなく、まずは「あなたの場合、注意の配分や動作の正確さ、判断・動作のタイミングは良いですね」など、測定結果の好ましい点を褒めて相手を受容することから始めます。現在の状態を肯定することで、その後の指導を受け入れやすい心理状態を作ります。
「〇〇が不十分という結果が出ています。日頃ヒヤッとしたことはありませんか?」と問いかけ、ドライバー自身に問題点を見つけさせます。管理者はあくまで「悪いくせを直そうとする努力を援助する立場」に徹し、締めくくりでも褒めるべき点は褒めつつ、注意すべき点を明確にして認識させます。
プロのドライバーに対し、人間性やマナーを直接的に否定するような言い方は反発を招きます。「これはあなたの客観的な自己評価の結果ですよ」と伝え、納得感を持って注意点を受け入れさせる工夫が必要です。
貨物自動車運送事業輸送安全規則により、運送事業者はドライバーごとに運転者台帳を作成し、営業所に備え置くことが義務付けられています。初任診断、適齢診断、特定診断などの適性診断の受診状況や、それに基づく指導の実施状況は、この運転者台帳の必須記載項目です。監査の際にも確認される重要な記録となるため、受診後は速やかに結果と受診日を台帳に記録・保管しておく必要があります。
「運転適性に応じた安全運転」の教育では、定期的な適性診断の受診と、その結果を用いた面談をセットで行うことが最も効果的です。
誰にでも「運転のクセ」や「ストレスによる焦り」は存在します。それを否定するのではなく、客観的なデータを用いて自覚を促し、プロとしてどのように感情や行動をコントロールすべきかを会社全体で考え、共有していく体制づくりが求められます。
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