このページでは、2025年4月から義務化された貨物軽自動車安全管理者制度について解説します。軽バン・軽トラックで運送業を営む個人事業主や小規模事業者にとっては、これまで縁のなかった「運行管理」に近い体制づくりが急に求められることになった、影響の大きい制度です。何が義務になり、いつまでに何をすべきか整理していきましょう。
貨物軽自動車安全管理者制度は、軽自動車(黒ナンバー)を使って貨物を運ぶ「貨物軽自動車運送事業者」に対し、安全管理体制の構築を義務付ける制度です。これまで白ナンバー・緑ナンバーの運送事業者に比べて緩やかだった黒ナンバー事業者にも、運行管理に近い水準のコンプライアンス対応が求められるようになりました。
※参照元:国土交通省「貨物軽自動車運送事業に関する安全対策について」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001977155.pdf)
背景にあるのは、EC市場の拡大に伴う軽貨物運送需要の急増です。保有台数1万台あたりの死亡・重傷事故件数が増加傾向にあることを受け、2024年5月に貨物自動車運送事業法などの改正法が公布され、2025年4月1日から本格的に施行されました。
個人事業主として独立したばかりの事業者や、数台の車両で運営するフランチャイズオーナーなど、運行管理の実務経験がほとんどないまま事業を営んでいる層が新たに規制の対象となった点が、この制度の特徴的なところです。
制度の対象は、バイク便事業者を除く、貨物軽自動車運送事業を営むすべての事業者・個人事業主です。事業規模や従業員数に関わらず、営業所ごとに最低1名の「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、国土交通大臣の登録を受けた講習機関で講習を受けさせる必要があります。複数の営業所を持つ場合は、拠点ごとに選任が必要です。
選任した安全管理者については、運輸支局を通じて国土交通大臣への届出も必要になります。すでに安全運転管理者や運行管理者を選任している場合は、その人物が貨物軽自動車安全管理者を兼務することも可能です。
選任すれば終わりではなく、安全管理者には日常的に次のような業務が求められます。
一般貨物自動車運送事業の運行管理者が担う業務と重なる部分が多く、「点呼」や「日報」に近い管理を、これまで自己流で運営してきた事業者にも導入させる制度だとイメージすると分かりやすいでしょう。
制度への対応を怠った場合、次のような罰則が定められています。
※参照元:貨物自動車運送事業法 第七十五条第六号・第七号、第八十一条第四号
安全管理者本人が業務を怠ったこと自体への直接的な罰則は、現時点では明確に定められていません。ただし、その結果として運転者が飲酒運転などの事故を起こした場合、車両を提供した事業者も罰則を受ける可能性がある点には注意が必要です。行政処分歴は国土交通省のWEBサイト上で一定期間公開されるため、取引先からの信用にも影響しかねません。
2025年3月31日までに貨物軽自動車運送事業の経営届出を行っていた既存事業者には、以下の猶予期間が設けられています。
猶予期間があるとはいえ、直前になって講習の予約が取りづらくなる可能性もあります。2026年9月頃までを一つの目安に、選任・届出・講習受講までを済ませておくことをおすすめします。2025年4月以降に新たに経営届出を行った事業者には猶予期間がなく、事業開始前に速やかな対応が必要です。
運行管理の実務経験がない事業者ほど、何から着手すべきか分かりにくいのがこの制度の難しさです。まずは、①誰を安全管理者に選任するか、②いつ講習を受けさせるか、③運転者等台帳や乗務割をどう記録・管理するか、という3点を洗い出すところから始めましょう。
特に、これまで日報や点呼の記録を取る習慣がなかった事業者にとっては、記録・管理を仕組み化すること自体が最初のハードルになりやすい部分です。紙の台帳で管理するか、システムやeラーニングを活用して省力化するかも、事業規模に応じて早めに検討しておきたいポイントです。
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