このページでは、トラック運送事業者の安全への取り組みを客観的に示せる制度として知られるGマーク(安全性優良事業所)について、評価の仕組みと、安全教育がどの項目で評価されるのかを解説します。取得を目指す事業者はもちろん、何から手を付けるべきか整理したい運行管理者の方も、全体像の把握にご活用ください。
Gマーク(安全性優良事業所)認定制度は、国土交通大臣が指定する全国貨物自動車運送適正化事業実施機関である全日本トラック協会が、2003年7月から運営している制度です。利用者がより安全性の高い事業者を選びやすくするため、事業所(営業所)単位で安全性を評価・認定し、公表する仕組みになっています。
2026年3月末時点で、全国29,254事業所(全事業所の34.4%)が認定を受けています。また、6回目の更新を迎える事業所は、20年にわたる安全運行の実績が評価され、「長期安全認定事業所」として「ゴールドGマーク」を使用できます。
※参照元:全日本トラック協会「2026年度 貨物自動車運送事業安全性評価事業 申請案内」(https://jta.or.jp/pdf/gmark/shinsei2026/annai.pdf)
申請できるのは、一般貨物自動車運送事業および特定貨物自動車運送事業の営業所です。2026年度の申請案内では、次のすべてを満たす必要があるとされています。
申請は年1回で、2026年度はWeb申請システムでの申請(受付期間は7月1日〜14日)が必要でした。新規申請などでは、取組の積極性を示す「挙証書類」を、各都道府県のトラック協会(地方実施機関)の窓口へ提出する必要があります。申請料は無料で、評価結果は12月中旬に通知される予定とされていました。
認定の有効期間は、新規認定が2年間、初回更新が3年間、2回目以降の更新は4年間です。申請の時期や提出方法、評価項目は年度ごとに見直されるため、実際に申請する際は、その年度の最新の案内をご確認ください。
※参照元:全日本トラック協会「2026年度貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)新規申請・更新申請」(https://jta.or.jp/member/tekiseika/gmark/shinsei2026top.html)
Gマークの評価は、次の3つの評価項目を点数化して行われます。2026年度の申請案内では、100点満点となっています。
| 評価項目 | 配点 | 基準点 | 主な評価の対象 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ.安全性に対する法令の遵守状況 | 40点 | 32点 | 地方実施機関による巡回指導の結果(運輸安全マネジメントの取組を含む) |
| Ⅱ.事故や違反の状況 | 40点 | 21点 | 有責の第一当事者となる事故の有無、行政処分の累積点数 |
| Ⅲ.安全性に対する取組の積極性 | 20点 | 12点 | 安全対策会議や運転者の教育などの取組(自己申告と挙証書類) |
認定を受けるには、合計80点以上であることに加え、3つの評価項目それぞれで基準点を満たす必要があります。さらに、評価項目Ⅲの4つの自認項目グループのすべてで得点していること、法に基づく認可申請・届出・報告が適正に行われていること、社会保険等に適正に加入していることも要件です。
評価項目Ⅱでは、対象期間(2026年度の申請では2023年12月1日〜2026年11月30日の3年間)に、営業所の事業用自動車が有責の第一当事者となる事故がある場合、認定されません。一度の事故が認定可否に直結する点は、事故防止教育の重みを考える上でも押さえておきたい点です。
評価項目Ⅰは、トラック協会の巡回指導の結果がそのまま点数になります。25項目・40点のうち、安全教育に直結する項目は次の3つで、合計7点を占めます。
基準点は32点のため、失点できるのは8点までです。点呼、過積載、過労防止、定期点検、健康診断といった3点配点の項目もあるため、教育関連の項目で取りこぼすと、基準点の確保が一気に苦しくなることになります。
また、巡回指導で「否」となった項目は、その後に改善しても加点されません。対象期間内に複数回の巡回指導を受けた場合も、1回目の結果が使われます。巡回指導への備えについては、記録簿の整え方を含め、関連記事もあわせてご確認ください。
評価項目Ⅲは、4つのグループ・18項目の中から、自社が取り組んでいる項目を自己申告し、挙証書類で証明する形式です。各グループから最低1項目を選択し、そのすべてで得点した上で、合計12点以上が必要になります。
| グループ | 主な項目 | 上限 | 基準点 |
|---|---|---|---|
| 1.運転者等の指導・教育 | 自社内研修、外部研修への派遣、運転記録証明書による指導、省エネ運転の個別指導 | 9点(各3点、最大3項目) | 1点以上 |
| 2.輸送の安全に関する会議・QC活動 | 事業所内の安全対策会議、QC活動、荷主等との会議、意識向上の取組 | 4点(各2点、最大2項目) | 2点以上 |
| 3.法定基準を上回る対策 | 一般診断の実施、健康起因事故防止対策、安全装置の装着、時間外労働時間短縮 | 4点(各2点、最大2項目) | 1点以上 |
| 4.その他の取組み | 健康起因事故防止、認証取得、表彰実績、運行管理システムの導入など | 3点(各1点、最大3項目) | 1点以上 |
このうち、安全教育と関わりが深いのがグループ1です。最大9点と、評価項目Ⅲの配点20点の半分近くを占めるため、教育の取組を整えることが、基準点12点の確保に大きく影響します。たとえば、自社内で行う運転者研修は、選任運転者の半数以上が受講すれば3点、半数未満の場合は1点とされています。
申請案内には、教育に関する取組が加点の対象とならないケースも示されています。特に、次の3点は見落としやすいポイントです。
国土交通省告示に基づく法定教育は、国土交通省が発行するテキストのみを添付した場合、「法令等で義務のある研修」とみなされ、加点されないことがあります。法定以上の取組として、自社独自に行っている内容がわかる資料や実施記録が必要です。運行管理者講習や、事故惹起・初任・高齢の運転者への特別な講習も、外部研修の項目では対象外とされています。
日常の朝礼や点呼時の指示、書面による通知・伝達は、研修として評価されません。研修として評価されるには、具体的な指導内容がわかる実施記録や資料が必要です。
添乗指導、ドライブレコーダー映像による個別指導、eラーニングなどを活用する場合は、実施年月日、運転者の氏名、指導者の氏名、指導コメントまたはテストの結果などがわかる書類が求められます。運転者個人による自己チェックやテストのみで、指導の記録がないものは対象になりません(システムから結果が出力され、個人に指導として伝えられる仕組みのものは対象です)。
※参照元:全日本トラック協会「2026年度 貨物自動車運送事業安全性評価事業 申請案内」(グループ1-(1)、(2)の判断基準・対象外の記載)(https://jta.or.jp/pdf/gmark/shinsei2026/annai.pdf)
評価項目Ⅲの取組は、申請の基準日(2026年度は7月1日)までに実施したものが対象で、基準日の翌日以降の取組は認められません。教育に関わる項目の多くは「過去1年間」などの実績で判断されるため、申請の直前に慌てて始めても間に合わない点には注意が必要です。実務としては、次のような運用を心がけましょう。
こうした記録の整備は手間がかかるため、教育の実施から受講履歴の管理までを一元化できる仕組みを整えておくと、運行管理者の負担軽減にもつながります。
全日本トラック協会の申請案内(令和8年4月現在)では、認定事業所に対するインセンティブとして、次のような内容が紹介されています。
なお、これらの内容は、制度の改定や各協会の予算状況によって変わる場合があります。最新の内容は、全日本トラック協会や所属する都道府県トラック協会の案内でご確認ください。
2026年度の申請は、4月下旬の申請案内の公開、6月1日のWeb申請システムの稼働、7月1日〜14日の申請受付、12月中旬の結果通知、という流れでした。申請案内が公表されてから準備を始めると、取組の実績づくりが間に合わないことが多いため、巡回指導の結果、事故・違反の状況、教育や会議の記録を、日頃から整えておくことが現実的な対応です。
特に、運行管理者の業務が逼迫している事業者では、教育の実施・記録・管理を外部サービスに任せることで、挙証書類の作成負担を抑えながら、安全教育の質を維持しやすくなります。自社の状況に合った方法を、早めに検討しておくとよいでしょう。
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