このページでは、65歳以上の高齢ドライバーに義務付けられている「特別な指導」と「適齢診断」の実務について解説します。適齢診断そのものは受診させていても、その後の「特別な指導」の実施・記録が抜け落ちているケースは非常に多く、巡回指導でも指摘の多い項目です。診断後に何をすべきか、実務目線で整理します。
貨物自動車運送事業輸送安全規則では、事故惹起運転者・初任運転者・高齢運転者を「特定運転者」と位置付け、それぞれに国土交通大臣が認定する適性診断の受診と、診断結果を踏まえた特別な指導を行うことを事業者に義務付けています。高齢運転者向けの適性診断が「適齢診断」です。
※参照元:国土交通省「事業用自動車の安全対策(運転者に対する指導及び監督)」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/instruction.html)
適齢診断は、65歳に達した日以後1年以内に1回、その後は3年以内ごとに1回受診させる必要があります。65歳以上の人を新たに運転者として選任した場合は、選任日から1年以内が受診期限です。
ドライバー不足を背景に、65歳を超えても乗務を続けるドライバーが増えている現場も多く、「これまで社内に高齢ドライバーがいなかったので見逃していた」という受診漏れが起こりやすいテーマでもあります。誕生日や選任日を基準に、対象者を機械的に洗い出せる管理の仕組みを持っておくことが第一歩です。
ここが最も見落とされやすいポイントです。ある県のトラック協会の巡回指導結果では、指摘項目の中でも「特定の運転者に対して特別な指導を行っているか」という項目が、連続してワースト1位になっているというデータが報告されています。
※参照元:一般社団法人富山県トラック協会「65歳以上の運転者に義務!適齢診断を受診していますか?その後の教育指導は?」(https://www.toyamatrucking.or.jp/news/9786/)
つまり、適齢診断は受診させていても、その結果を踏まえた「特別な指導」自体を実施していない、あるいは実施していても記録が残っていないケースが非常に多いということです。「口頭で話しただけ」では指導を実施したことにはならず、記録がなければ実施したとは認められません。
特別な指導は、適齢診断の結果を運行管理者が一方的に伝えるだけでは不十分です。診断結果に表れた本人の傾向(反応速度、視野の広さ、判断の癖など)をもとに、日常の運転行動と結びつけて指導することが求められます。
記録として残しておきたい項目の例は以下の通りです。
他の法定12項目の記録と同様に、指導記録は3年間保存する運用にしておくと、巡回指導や監査の際にも説明がしやすくなります。
高齢ドライバーへの指導では、本人が変化を自覚しにくい部分に、いかに気づいてもらうかが鍵になります。視野の狭まりや反射速度の低下、股関節・腰の痛みによる荷役作業への影響など、本人の自尊心に配慮しながら、客観的な事実として伝える姿勢が求められます。
面談は運行管理者一人で抱え込まず、必要に応じて本人の家族を交えることも検討しましょう。物忘れや確認不足など、運転以外の場面での変化に家族の方が先に気づいているケースも少なくありません。
指導を重ねても改善が見られない場合、無理に乗務を続けさせることはドライバー本人にとっても、周囲の安全にとってもリスクになります。運転業務から近距離配送や庫内業務への配置転換など、本人のキャリアを継続しつつ安全を確保できる選択肢を、早い段階から選択肢として持っておくことが望ましいでしょう。
なお、物忘れや確認不足が目立つ場合には、加齢そのものではなく認知機能の低下(MCI)が背景にある可能性も考えられます。この点については別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
高齢ドライバーへの特別な指導は、対象者が限られる分、忙しさの中で後回しにされがちなテーマです。65歳到達日をあらかじめカレンダーで管理し、適齢診断の受診と特別な指導・記録作成をワンセットの業務フローにしておくことで、抜け漏れを防ぎやすくなります。
当メディアでは、ベテランが多い、あるいは時間が不規則といった「現場の状況」に合わせた比較軸で各サービスを解説しています。自社が抱える事故リスクを解消するために、どの観点で比較すべきか。
より詳しいサービスの特徴や選び方のポイントは、ぜひTOPページでご確認ください。
教育に必要な内容は、ベテラン・初心者が多いか、あるいは勤務時間が異なりドライバー全員参加での研修が難しいといった現場の状況によって異なります。そこで今回は、それぞれの状況に合わせた3社を厳選。自社にフィットするサービスをご紹介します。